「百貨店冬の時代」と言われて久しく、とりわけ地方の百貨店は厳しい経営状況に置かれ、撤退が相次いでいます。新型コロナ災禍はこれにさらなる拍車をかけているように見えます。

地方の百貨店が苦境に陥る理由に、大手アパレル中心のテナント店舗ばかりで陳腐化した印象があることや、郊外ロードサイドへの新興ショッピングモール出店ラッシュの影響、などがよく指摘されるところと思います。実際、地方の百貨店が単なる大都市店舗のミニチュア版なら、百貨店はもはや大都市部だけで十分、という話になっても仕方ないでしょう。

かつて昭和の頃、非日常体験のできる「デパート」として魅力的な空間であり、庶民的な娯楽の一つだったと思います。しかし、バブル経済あたりから平成を通じての30数年間、百貨店はどこも「右に習え」とばかりに大手アパレルブランド中心の店舗づくりが続いたようです。その結果、昭和のデパートにあった魅力(大食堂・屋上遊園地・おもちゃ売場など)も次第に廃れ、周辺のショッピングモール出店攻勢に押され、百貨店の大都市一極集中が進むことになったことでしょう。

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しかし、地方の百貨店はオワコン産業なのでしょうか?

幸い、地方百貨店の活性化の一つのカギは「地場産業を活かすことである」との認識が共有され、大手が来ないなら地場店舗を迎えて導入しようという、古くて新しい流れが生まれているようです。

例えば、天満屋福山店(広島県福山市)。

同店には、市内に本社を置く国産デニムメーカー「山陽染工」のオリジナルセレクトショップ「FUKUYAMA MONO SHOP」を2020年10月に出店。福山市をはじめ広島県備後地方は国内最大のデニム生産地です。「FUKUYAMA MONO SHOP」は大型ジーンズ専門店で、福山市内の工場で製造された福山デニムや衣料品、雑貨、マスクなどが並んでいるとのこと。このお店のあるフロアは、もともと複数の大手アパレルショップの入っていたところ。同フロアは高級フォーマル寄りな雰囲気から、カジュアル志向に大きく様変わりしたようです。

地元産にこだわる店舗づくりの面白い事例は、他にトキハ別府店(大分県別府市)も挙げられます。別府といえば温泉で有名でしょう。同店は観光地の一等地という立地を活かすかたちで、2019年に「地元産」にとことんこだわった売場を開設するという取り組みに踏み切ったそうです。また、化粧品売場の中には、地元産苔玉の専門店も登場し、苔玉の緑が人目を引く存在となっているとのこと。

コロナ災禍のもとで全国物産展の開催も困難な中、「地元産品の物産展」で集客を図る地方百貨店が増えているのも、良い傾向と言えます。

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地方百貨店の生き残る道は、「地元の魅力を発掘すること」、「地元顧客を大切にすること」にありそうですね。


コロナ苦境の地方百貨店、テナント撤退が相次ぐも
「個性的な地場店舗」が続々(都市商業研究所

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